大山公園現況調査報告

農業技師 佐藤昭一

はじめに

 

1,大山公園はかつて“太平山”あるいは“三笠山”等と呼ばれていた丘陵を削り取り“借景”を基盤  にして造園的土木、植栽技法によって構築された作庭公園いわゆる“坪山”である 合併後“作庭郊外公園”として地区民及び市民全体の活用に供されてきたが、その維持管理の基本は一般住宅の庭園管理と全く同様であり、この管理維持無しでは短期間に荒廃するのは誰でも分かり切ったことである。

2,“作庭公園”あるいは“作庭住宅庭園”の管理維持の原則は、庭園主木、景観木及び“地覆植物” の生育及び生育促進管理である。
 具体的には“庭園木”“下草”以外の異種雑木、雑草の継続した除去管理と、生育成長調整及び“花芽分化”促進 (花木類)を考慮した剪定、整姿管理が主であり、(いわゆる庭の手入れ作業)状況に即応して“施肥管理”や“灌水管理” “病虫害管理”が行われる。

※造園的に作庭されて維持管理される住宅庭園を始め、どこの作庭都市公園を見ても主木、  景観木及び“地覆植物”以外の雑木や雑草は、きれいに除去されている。

3,大山公園においては、およそ30年位の間、これらの庭園管理の中でもっとも重要な雑木、雑草の除去と、庭園木の剪定、整姿及び下草(野芝類、笹など)の刈込管理がよく行なわれなかったために、現在の壊滅的荒廃を招いたのは明らかなことであり、町内会拠出金をもって運用される大山公園維持管理に携わる諸機関や、会議構成者の責任も免れないことである。  特に自然環境保護の名のもとで“人手をかけないことが自然保護”などと思いこんでいるような人が、その構成員の中で我説を高唱した影響大とすれば、構成員の中の“知識人”としての立場上、責任はなおさら重大である。

 


Ⅱ.大山公園庭園樹壊滅への過程説明( 関連事項解説と図解と現況写真説明)

1,基礎的関連事項解説(庭園木についての予備知識)
ⅰ、庭園木生産地と耐候性
造園主木、添景木として多用される“松”“桜”“梅”“紅葉”などの多くは、関東から関西地方一円に点在する温暖な気象環境の植木特産地で生産される。 埼玉県の[安行]、大阪の[宝塚][池田]の三大植木産地は昔から有名だが、近世では植物別の特産化が進み、九州、和歌山の“つつじ類”の産地形成など多様化している。 
 いずれも温暖な環境の地域で効率的に生産されるため“耐候性”が低く、北部日本海沿岸地帯での植栽では活着までの植傷みや生育不良などの障害が出やすい。

ⅱ、庭園木の生産養成方式と“根相”形成過程
 主とする庭園木の生産養成は次のような方式で行われるため、実生自然木の“根相”と  は全く異なる庭園木あるいは造園木独特の“根相”を形成する。 この根相の違いが、庭園管理放任に起因する自然実生木の発生頻度や、庭園木の樹勢衰退の要素となる。

① 実生養成による植木の生産  接ぎ木台木生産を始め防砂林などで使われる黒松苗  木生産や、鉢植、盆栽生産を目的にした場合に多い。 

播種から発芽直後に、実生独特の“直根”を切除して“支根”の発生を促進させ、毎年これを繰り返して“毛根”の多い苗木を養成し、鉢植え盆栽、植木を生産する。生産養成期間は長いが上質の植木、接ぎ木台、鉢植苗が出来る。

 

 

 

 

② 挿し木養成による植木の生産接木台木の生産を始め、つつじ類、椿、あじさいなどの添景木あるいは群植造形木の苗木生産で行われる。

“挿し木”繁殖で生産される樹木の多くは浅根横張性で細根が多く、太根が少ないため移植作業が容易である。 しかしその植生周辺の高木や実生雑木の繁茂による環境悪化で、日照不足、養水分欠乏、病虫害発生などの障害が出やすく、特に花木類においては顕著である。